2018年04月24日

「戦後入門」(加藤典洋、ちくま新書)

 中曽根首相が「戦後政治の総決算」を掲げた時代に青年期を過ごした私にとって、「日本の戦後とは何か」というのはずっと心に引っかかる問題だった。また、現在の安倍首相がめざす「美しい国」なるものが、自分にとって少しも美しく感じられないのはなぜか、というのもずっと引っかかってきた。

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 加藤氏の卓越した分析を通して、戦後日本が歩んできた道のりと、それが行き詰まりつつある現状について、考え方の一つの枠組みを得ることができた。特に、吉田ドクトリンの「憲法9条を逆手に取った軽武装路線」で戦後の経済成長が実現されたこと、その背景にある「徹底的な対米従属」の構造が経済的繁栄に覆い隠されて見えなくされていたこと、そしてその経済成長の鈍化とともに「独立国なのに独立していない」矛盾が明らかになってきたこと、という一連の流れが理解できるようになった。多くの人(必ずしも「右寄り」とも限らない)が「日本のプライドを取り戻したい」という渇望を持っているのは、結局のところこの矛盾の解消を求めていることに他ならない。

 それでも、安倍首相や日本会議が目指しているような形での「誇りある日本」へのアプローチが、日本のプライドを取り戻すことにつながるとは、どうしても思えない。結局それは、「戦前の日本を無批判に肯定する」方向に行くしかなく、その路線では日本以外の国から広く共感を得ることは難しい。他者からの承認がないプライドを持ってみたところで、新たな矛盾に苦しむことにしかならない。

 加藤氏の主張の骨子は、日本が真のプライドを取り戻すためには「国際社会の新しい秩序の先導人」として自らを位置付け、その立場を発信していくしかない、という点にあると思う。もっとも、その実現方法として「国連中心の世界秩序」という方向は妥当かどうかわからない。また、そもそも現在の日本政府は「新しい国際的秩序の構築」への関心を何ら示していない。まずは、そういう点に関心を持つ政治家を我々の手で選び、議論を重ねていくことが第一歩ではないか。

タグ:読書 社会
posted by toshinagata at 19:28| 日記
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