2020年01月12日

映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」

 妻・ヒメと3人で見てきました。前作も、終了後しばらく立ち上がれないぐらい感動したのだけど、今回はそれを上回った…

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出典:eiga.com、「ポスター画像」 https://eiga.com/movie/89537/photo/

 前作は、呉に嫁入りしたすずさんが、小姑の径子との関係に悩みながらも、周りの優しい人たちに支えられながら生きていく、というストーリーだった。今回は、前作で一瞬しか登場しなかったリンさんが主要人物の一人として重要な役割を果たす。その結果、すずさんの生き方は、前作とは全く色合いが違って、深い奥行きを持つものになっている。夫・周作との心理的な関係も複雑になる。幼馴染の水原が訪ねてくるエピソードも、前作とは意味合いが全然違う。

 テルちゃんとのシーンが本当に印象的です。このシーンは、原作漫画でもとても印象深い。短い場面にいろいろな思いが込められている。九州から呉に出て遊女として働き、体を壊して辛いのに、なお他人への情を失わない。すずさんは南の島の絵を雪に描いてやり、テルちゃんはそれを見て「ずっと笑っていた」。

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出典:eiga.com、「本編映像:テル登場シーン」 https://eiga.com/movie/89537/

 このシーンでの、すずさんのリンさんへの思いは、すごく複雑です。リンさんは友達でもある、と同時に「ライバル」でもある。りんどうのお茶碗のことを、すずさんは「私のものではない」と感じている。しかし、それをリンさんに届けに行く、というのはどういう思いなのだろうか。そこは想像で埋めるしかない。この「観客(読者)の想像に委ねる」という作り方は、原作のこうの史代さんと、映画の片渕監督に、共通するアプローチではないかと思う。

 桜の場面で、すずさんはリンさんからテルちゃんの口紅を託される。この口紅は、周作が海軍に出発するときに口に塗ったり、空襲の場面で砲弾に打ち砕かれたり、そのあとの回想シーンで(失われた右手とともに)絵を描く道具として現れたりするのだが、この場面は前作ではどう描いてあったのか、気になってしまった。特に何の意味もなく、口紅として登場してたのかなあ。本作を見てしまうと(あるいは原作漫画を読んでしまうと)、それが「リンさんから託されたテルちゃんの形見」であることの意味はとてつもなく大きいと感じられてしまう。

 168分の長尺だけど、長いとは全く感じなかった。この作品が完成して、世に公開されたことに感謝したい。

タグ:映画
posted by toshinagata at 13:32| 日記
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