2019年10月06日

「おまじない」(西加奈子著、筑摩書房)

 西さんの小説、初めて読了しました。

20191006-1.jpg

 帯に「女子たちの背中をそっと押してくれる魔法のひとこと−」とある。いろいろと背伸びして、頑張って生きて、でもそういうことに実は疲れていて、思い悩んでいる女性たち。そんなときに、彼女らの心に届く言葉がある。何か劇的なことが起きるわけではないんだけど、どんよりした雲が少し薄らいで見える、そんな感覚がある。

 言葉を発する人は、どれも男性である。それも、はたから見てあまりぱっとしない人であることが多い(「孫係」のおじいちゃまはちょっと違うけど)。この短編集は、そういう設定の世界なのだろう。女性が女性の言葉に救われる話を読みたい人は、他の本を読めばいい。「ぱっとしない人」とは、たとえばいちごのことしか頭にない田舎のじいさんとか、まったくうだつの上がらない売れない芸人とか、むやみに物識りだけど仕事もせずに90歳の母親のスネをかじっているおっさんといった面々である。そういう人たちの言葉に、なんともいえない「優しさ」がにじみ出ている。

 西さんは、こういう人たち、つまり悩んでいる女性たちと、その周りにいるぱっとしない男性たち、に愛おしさを感じているんだろうな、と思う。

なんてダサい、そして下衆な人間なのだろう。

私は弱い。

立ち上がると、視界がなんだかクリアだった。薄くはっていた膜がぽろりと取れた。(「マタニティ」)

 ダサくても、下衆くても、弱くても、そのまま生きていくんだ、という実感。それは、「ありのままでいいんだよ」という応援メッセージともちょっと違う。もう少し、「生きていく」ことの面倒くささまでも包み込んだ上での実感が、この短編集にはある。これはきっと、西さんの人生観でもあるんだろうな。

タグ:読書
posted by toshinagata at 14:14| 日記

2019年09月22日

LuaHPDF + wxWidgets で日本語 PDF

 「LuaHPDF:日本語の PDF 文書を作る」のつづき。Mac, Windows のクロスプラットフォームにしようと思って、また一苦労した。

 先日のコードでは、フォントのファイルパスを /Library/Fonts/Microsoft/MS Gothic.ttf とハードコーディングしている。これを何とかできないか、せめて「フォント名」を指定して、そこからフォントファイルを探すようにできないかと考えた。しかし、Windows ではこれが非常に難儀だった。どうやら、公式の API は存在しないようで、レジストリを自力で探すか、フォント名からデータを取得してファイルの内容と突き合わせるか、非公開の API を使うか、そんな方法しかないらしい。

 今作成しているプログラムでは、フォントは「MSゴシック」固定でも特に問題はないので、下のように対応することにした。フォントのファイルパスはハードコーディングしておき、見つからなければ埋め込み無しの「MS-Gothic」を使う。

-- プラットフォーム名。"Mac", "Windows" などになる
local platform = string.match(wx.wxGetOsDescription(), "^(%S*)")
local pdf = hpdf.New()
local page = hpdf.AddPage(pdf)
local height = hpdf.Page_GetHeight(page)
local width = hpdf.Page_GetWidth(page)
hpdf.UseJPEncodings(pdf)
local font_name
--  MS ゴシックの ttf/ttc があれば使う、なければ UseJPFonts の MS-Gothic を使う
if platform == "Mac" then
  font_name = hpdf.LoadTTFontFromFile(pdf, "/Library/Fonts/Microsoft/MS Gothic.ttf", 1)
elseif platform == "Windows" then
  font_name = hpdf.LoadTTFontFromFile2(pdf, "c:\\Windows\\Fonts\\msgothic.ttc", 0, 1)
end
if font_name == nil or font_name == "" then
  hpdf.UseJPFonts(pdf)
  font_name = "MS-Gothic"
end

 もう一つ、地味に面倒なのが、UTF-8 文字列を Shift-JIS 文字列に変換する方法。UTF-8 と Shift-JIS の文字の並びには何の関連性もないので、表を引くしかない。車輪の再発明は避けて、それぞれの OS の機能を素直に使う。Lua の関数として実装した。

/*  UTF-8 string to CP932 (Windows Shift-JIS) string  */
static int
utf8_to_sjis(lua_State *L)
{
    size_t len;
    const char *utf8 = lua_tolstring(L, -1, &len);
    if (utf8 == NULL)
        luaL_error(L, "Cannot get string");
    
#if defined(WIN32)
    size_t widelen, sjislen;
    wchar_t *wide;
    char *sjis;
    widelen = MultiByteToWideChar(CP_UTF8, 0, utf8, -1, NULL, 0);
    wide = calloc(widelen + 1, sizeof(wchar_t));
    if (wide == NULL)
        goto error_alloc;
    if (MultiByteToWideChar(CP_UTF8, 0, utf8, -1, wide, widelen + 1) == 0) {
        free(wide);
        goto error_conv;
    }
    sjislen = WideCharToMultiByte(CP_THREAD_ACP, 0, wide, -1, NULL, 0, NULL, NULL);
    sjis = calloc(sjislen + 1, sizeof(char));
    if (sjis == NULL) {
        free(wide);
        goto error_alloc;
    }
    if (WideCharToMultiByte(CP_THREAD_ACP, 0, wide, widelen + 1, sjis, sjislen + 1, NULL, NULL) == 0) {
        free(wide);
        free(sjis);
        goto error_conv;
    }
    lua_pop(L, 1);
    lua_pushlstring(L, sjis, sjislen);
    free(wide);
    free(sjis);
    return 1;
#elif defined(__APPLE__)
    CFStringRef ref = CFStringCreateWithBytes(kCFAllocatorDefault, (const UInt8 *)utf8, len, kCFStringEncodingUTF8, false);
    if (ref == (CFStringRef)0)
        goto error_conv;
    size_t widelen = CFStringGetLength(ref);
    char *sjis = (char *)calloc(widelen * 2 + 1, sizeof(char));
    if (sjis == NULL) {
        CFRelease(ref);
        goto error_alloc;
    }
    if (!CFStringGetCString(ref, sjis, widelen * 2 + 1, kCFStringEncodingDOSJapanese)) {
        CFRelease(ref);
        free(sjis);
        goto error_conv;
    }
    lua_pop(L, 1);
    lua_pushlstring(L, sjis, strlen(sjis));
    free(sjis);
    CFRelease(ref);
    return 1;
#endif
error_conv:
    luaL_error(L, "Cannot convert");
error_alloc:
    luaL_error(L, "Cannot get string");
    return 0;
}
posted by toshinagata at 12:03| 日記

2019年09月21日

LuaHPDF:日本語の PDF 文書を作る

 「Lua で PDF 作成:LuaHPDF」のつづき。日本語を含む PDF 文書を作るには、次の関数を使う。

  • hpdf.UseJPFonts(): 日本語の「MS明朝」「MSゴシック」「MSP明朝」「MSPゴシック」の4つのフォントを使えるようにする。
  • hpdf.UseJPEncodings(): 日本語の「90ms-RKSJ-H」「90ms-RKSJ-V」「90msp-RKSJ-H」「EUC-H」「EUC-V」エンコーディングを使えるようにする。
package.cpath = "./?.dylib;" .. package.cpath
--  "mysampleあいうえお" をシフトJISで表記
local s = "mysample\\130\\160\\130\\162\\130\\164\\130\\166\\130\\168"
hpdf = require "hpdf"
local pdf = hpdf.New()
local page = hpdf.AddPage(pdf)
local height = hpdf.Page_GetHeight(page)
local width = hpdf.Page_GetWidth(page)
hpdf.UseJPEncodings(pdf)
hpdf.UseJPFonts(pdf)
local font = hpdf.GetFont(pdf, "MS-Gothic", "90ms-RKSJ-H")
hpdf.Page_SetFontAndSize(page, font, 24)
hpdf.Page_BeginText(page)
hpdf.Page_TextOut(page, 60, height - 60, s)
hpdf.Page_EndText(page)
hpdf.SaveToFile(pdf, "jp_from_haru.pdf")
hpdf.Free(pdf)

 できました。

20190921-1.png

 Windows 以外の環境だと「MS……」というフォントは標準搭載ではない。私の環境では、Mac でも Microsoft Office が入れてあるので、「MS……」が後からインストールされている。「MS……」が入っていない環境ではどう見えるか。VirtualBox に Debian を入れて、チェックしてみた。表示しているのは、ファイルビューアーの Evince。小文字の m のスペーシングがおかしい。

20190921-2.png

 代替フォントで何が使われているかは、「プロパティ」で見ることができる。DroidSansFallback だそうです。

20190921-3.png

 埋め込みなしで「MS……」を指定して PDF を作成するのは、「使う人がほぼ必ず『MS……』フォントをインストールしている」という環境では実用的と言える。だけど、そもそも PDF は「どういう環境でも同じように表示できる」ことを期待して使うことが多い。ということは、haruPDF で文書を作成する場合でも、フォントを明示的に指定して、埋め込む方がいい。

 「MSゴシック」を明示して埋め込んでみた。hpdf.UseJPFonts() をやめて、代わりに hpdf.LoadTTFontFromFile() を使う。

package.cpath = "./?.dylib;" .. package.cpath
hpdf = require "hpdf"
--  "mysampleあいうえお" をシフトJISで表記
local s = "mysample\\130\\160\\130\\162\\130\\164\\130\\166\\130\\168"
local pdf = hpdf.New()
local page = hpdf.AddPage(pdf)
local height = hpdf.Page_GetHeight(page)
local width = hpdf.Page_GetWidth(page)
hpdf.UseJPEncodings(pdf)
--hpdf.UseJPFonts(pdf)
--font_name = "MS-Gothic"
local font_name = hpdf.LoadTTFontFromFile(pdf, "/Library/Fonts/Microsoft/MS Gothic.ttf", 1)
local font = hpdf.GetFont(pdf, font_name, "90ms-RKSJ-H")
hpdf.Page_SetFontAndSize(page, font, 24)
hpdf.Page_BeginText(page)
hpdf.Page_TextOut(page, 60, height - 60, s)
hpdf.Page_EndText(page)
hpdf.SaveToFile(pdf, "../jp_from_haru2.pdf")
hpdf.Free(pdf)
print("../jp_from_haru2.pdf created")

 Debian で表示してみた。うまくいきました。

20190921-4.png

 「プロパティ」で確認する。フォントが埋め込みされている。

20190921-5.png

 残念ながら、Mac に標準でインストールされている日本語フォントは、うまく埋め込みできなかった。ヒラギノ系も Osaka も "Unsupported ttf format." というエラーが出る。ヒラギノ系は OpenType なのでしょうがないとしても、TrueType の Osaka は読めて欲しかった。

posted by toshinagata at 16:50| 日記
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