2018年03月27日

「ティンパニストかく語りき」(近藤高顯/学研)

 ティンパニ奏者としての視点で、オーケストラの中でのティンパニの役割や、名ティンパニストの愉快な逸話を満載した快著。

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 著者のティンパニとの出会いがまずおもしろい。中学生の時に突然音楽に目覚め、何とか音楽の道に進みたいと思うも、吹奏楽部では空いていた楽器がトロンボーンしかなかった。しかも、金属アレルギーのためトロンボーンも辞めざるを得なくなり、「もう今からやるなら打楽器しかないな」ということで、音楽高校を経て東京藝大の打楽器科をめざす。ここまでのところで、諦めないのがまずすごいですよ。どこかで心が折れてもおかしくないのに。

 で、これだけの愛と勇気を持って打楽器の道に進んできた人に、神様がほほえまないわけがない。著者はいい師に巡り合っていますね。ティンパニストのフォーグラー氏、ホルン奏者の千葉馨氏、指揮者の小澤征爾氏、朝比奈隆氏…特に、マエストロ朝比奈氏との逸話は抱腹絶倒である。マエストロの語録がなんともユーモラス。ブルックナー4番で最後の一撃を出すタイミングがわからず冷や汗をかいたあとの「ヤッタなー!わしの言った通り終わったろ!」とか、ミサ・ソレムニスのフーガがぐちゃぐちゃになったあとの「終わったことはしかたがない…」とか。ともかく、「またいっしょにやろうや!」というマエストロの呼びかけは、ティンパニストに対する絶大の信頼を表してやまない。

 最後の章では、大作曲家がティンパニのために書き残した数々の名フレーズが語られる。専門書でないため譜例が載せられていないのが残念。いくつかここに載せておきましょう。

 ベートーヴェンの「フィデリオ」第2幕冒頭、「神よ、ここは暗い」と歌う場面。ティンパニが A-Es の減5度で調律されている珍しい例としてよく引用される。

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 リヒャルト・シュトラウスの「ブルレスケ」。いきなり曲の頭に無伴奏のソロ!

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 ホルストの「木星」は有名だけど、楽譜はこんな風になっている。2人がかりで6台のティンパニを駆使して旋律を担当。

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 同じ曲の途中にはこんな場面も出てくる。3つの三連符は理論上は(2人の奏者が分担すれば)旋律通りに演奏可能だが、さすがにこのテンポでは無理と判断して、こう記譜されているのだろう。

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タグ:音楽 読書
posted by toshinagata at 19:29| 日記
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